『ことばの履歴』山田俊雄 岩波新書

「あとがき」。収録されてゐるのは「詞苑間歩」のみ、編集から表記まですべて編集部に任せたらしい。

ここに収めたものは、どれを一つ取ってみても、身辺にあることばの用法や書きあらわし方などに話題を求めた、些細な贅言にすぎない。おそらく、年長けた人々の眼には、言わずもがな、書かずもがな、と映ることのみであろう。
今、この小冊を世に送るにあたって、私が思うことの一つは、次のようなことである。
私の如きものにとっては、日本の言語にかかわる文化とでもいいたいことどもが、最近の三四十年の教育の変化に伴って、いちじるしく荒廃して来ているように思われる。
現代仮名遣いのことよりも漢字制限の方法のつたなさが、いかにも過去の日本をないがしろにしていると痛切に感じる。詞林に遊ぶにも遊び方をもたないのでは、新しい世代の人々にとって生涯の損ではないか、と同情する。