雑誌『文学』岩波書店1962.01

タイトルがすりかえられた「かなづかい論」--福田恒存氏は橋本説を祖述していない なので期待を(といふより不安を)持って読んだが全くの期待はづれ。
福田が橋本説の引用・要約において不正確だ、といふ指摘はそのとほり。
それ以外は福田の論を曲解して非難してゐるだけで何の意味も無い。

で、(たった一つの)有意義な批判。
橋本論文の「表音式仮名遣は仮名遣にあらず」といふ文において、「仮名遣」の語は「かな表記原則」一般を意味するのではなく、従来の「仮名遣」を意味してゐる。つまり、「「表音式仮名遣」は「表記原則」たり得ない」とまでは(この論文では)主張してゐない。

だが、他の論文も読んでみれば橋本が「表音式仮名遣」に反対であることは明らかだらう。