柳瀬尚紀『翻訳困りっ話』河出文庫
一部で旧字旧かな表記なのだが、p56に「談合しやうか」と間違へてゐる。
p92、

鴎外の「大発見」も面白いが、「金貨」という短篇がこれまた面白い。「近処の家で、雨戸をがらがらと繰り明ける音がして、続いて咳払の声がした」という最後の一文の効果は絶妙である。読んでみるとわかる。読んでみないとわからない。こんなセンテンスに出会って、それをこんなに効果的な日本語に翻訳できたら、それこそ翻訳者冥利というものだろう。

ドストエフスキー『鰐』も鴎外の翻訳で読んで、ものすごく新しい感じがして云々。