斎藤緑雨の「新体詩見本」はパロディの傑作というものだ.外山正一調にはじまって福羽美静調,上田万年調,与謝野鉄幹調.さらに「いざや喰らはん椀の飯」にはじまる「懸賞募集軍歌調」をおまけにつけた.
 巧みにマネる.オリジナルを写して模倣する.借用し,言い換える.その際,多少とも誇張する.ほんのちょっぴり歪曲する.モノマネ自体は風刺ではないだろう.言い換えや借用も同じこと.しかし,風刺は技法と効果において,モノマネや言い換えや借用とかさなっているし,部分的にはまさにそれらの応用にほかならない.
 当然のことながら,マネをし,模倣する相手の姿勢とかかわってくる.お高くかまえたり,もったいぶっていたり,衒学じみていたり,ことさらまじめを粧っていたり――.姿勢はおのずと思想やモラルとも関係してくる.あいまいなところ,人知れず隠しているところ,ポーズしたところ,うさんくさいところ.それこそ風刺家の忍びこむ入口である.何くわぬ顔でそこを入り,ことさら相手のメロディーを口ずさみながら,さりげなく追加や省略や代用をほどこして,おもむろに笑うべき相手の愚劣さをバクロする.

先週の毎日新聞書評で気になった本。

  • 『太平洋を渡った日本建築』(NTT出版ライブラリ−レゾナント) 柳田由紀子
  • 『西欧言語の歴史』アンリエット・ヴァルテ−ル/平野和彦 /藤原書店

山鳩(きじばと)のイメージ検索をしてゐて見つけた。