秦氏の本

歪められる日本現代史

歪められる日本現代史

  • もらった年賀状の話(話の枕)

なかに「平和主義者達が暴力を放棄できるのは、ほかの人々が彼らに代って暴力を行使してくれるからだ」というジョージ・オーウェルの辛辣な一句を引用した人があり、ぎくりとさせられた。(p56)

はからずも、南京虐殺での「局所肥大」がマンガには稀な筆禍事件を招来したわけだが、その前までの昭和史の描き方は正統派的な重厚さを失わず、所々に歴史専門家も啓発される鋭い切り口を見せ、決して悪くない出来栄えである

惜しまれるのは、ビックス本とほぼ同時にピーター・ウェッツラー『昭和天皇と戦争』、ベン=アミー・シロニー『母なる天皇』、ケネス・ルオフ『国民の天皇』と、学術性の高い好著が紹介されたのに、タッチの差で出おくれ、背後にかすんでしまったことである。

戦争責任を論じた本で秀逸と評価できるのが、『天皇の戦争責任』

ついでに通訳の奥村勝蔵が筆記した第一回天皇マッカーサー会談の「御会見録」(二〇〇二年十月、外務省と宮内庁が公表)、一九四六年年頭のいわゆる天皇人間宣言の全文、加えて二〇〇三年に加藤恭子氏が発表したばかりの「国民への謝罪詔書草稿」の全文までいれてある。これほどそろえた資料集は他にないから、出版企画としては大成功の部類だろう。

昭和天皇と戦争―皇室の伝統と戦時下の政治・軍事戦略

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母なる天皇―女性的君主制の過去・現在・未来

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国民の天皇 戦後日本の民主主義と天皇制

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天皇の戦争責任

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