「チホー」の人

呉智英が対談をしてゐる『放談の王道』をもう一度読んでみた。本の中で知識人論に関連して、立花隆が変にもてはやされてゐるといふ話が出てゐた。要するに、彼は優れたジャーナリストではあるにしてもその思想は単純で近代化論者にすぎない、といふやうな指摘だった。
で、対談相手の宮崎哲弥が立花がいい仕事もしてゐる例として『ロッキード裁判批判を斬る』を挙げてゐた。「実践的な法律入門として読むといい本だ」とのこと。興味が湧いたので読んでみたところ、たしかに勉強になることが多い。
誤った論を展開したとして色々な人が批判されてゐるのだが、特に渡部昇一が粗雑な議論を得意げに披露してゐるといふ指摘が印象に残った。渡部については呉さんが「おれは『知的生活の方法』(渡部の本)を略して『チホー』と呼んでるんだ」と書いてゐたし、福田恆存も『問ひ質したき事ども』か何かで渡部を「夜郎自大の成上り者」と斬ってゐた。
これでますます渡部の本を読む気が無くなったわけだけれど、どうも専門の英語では優秀な人ださうなので、それについても食はず嫌ひになってしまひさうで困る。さういへば、渡部は白川静との対談本も出してゐて、白川先生目当てであれを読んだときには何だか悔しいやうな気になったものだ。