自主検閲


河出書房新社版は、日本シャーロック・ホームズ・クラブの主宰者小林司東山あかねが、一九九七年から二〇〇二年まで五年の歳月をかけて翻訳を完結したハード・カバーの美装本である。物語の本文は簡潔でわかりやすく、品格を保ちながらも原典の雰囲気をこわさないように表現に工夫がなされているほか、従来の翻訳に関して指摘されてきたさまざまな問題点の解消への配慮のあと──たとえば過去の誤訳の訂正や差別用語の排除など──がうかがえる。

差別用語の排除」。さういふ「配慮」って翻訳として正しいことなのか。